福岡のやばい父ちゃん

僕の大好きな父の話です。 お笑い芸人チャーミング井上二郎

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福岡のやばい父ちゃん「母」


母が家に帰ると、祖母から

「この人と結婚しんしゃい」

と言われた。

旅館の娘と、そこに偶然泊まりに来た男。

父は母を気に入りまず、祖母をまるめこんだ。

大金をちらつかせたのかどうやったかわからないが、嘘をならびたてたのだろう。

酒もタバコもやらないという約束で母は父と結婚した。

その後に酒もタバコもギャンブルも女もやると知ることになる。

四、五年前の話だ。

僕と父が話をしている時に父が韓国へ行ったと話を始めた。

そこへ母が来た。
父は、韓国に行ったことを母に内緒にしていた。

父が韓国に行ったのは女性遊びが目的だった。

父は焦った。

韓国に焼き肉を食べに行ったと言い訳を始めた。

焼き肉では弱いと感じた父は、韓国では日本と違い松茸が安いので松茸を食べに言ったと言い訳した。

すると母が父にぴしゃりと言い放った。

「なんば言いよっとね!松茸おったてに行ったっちゃろうもん!」

母はすべてをお見通しだった。

母は父の女性遊びをしかりつつも父の一物を松茸と偶然敬った。

母は天然だ。

そして寛大な母だが、旅館の一人娘で社会に出ておらず、世間知らずでおっちょこちょいだった。

母がおっちょこちょいで父が災難を受けることも少なくない。

父はお酒とも仲が良かった。

手が震える父に僕が大丈夫かと聞くと 

父は決まって

「大丈夫、酒飲んだら止まるけん」
と僕に答えた。

僕はこのやりとりが好きだった。

でも

この鉄板ギャグもだんだん笑えなくなった。

父は病院に入院させられた。

1ヶ月の入院。

幸い、治療でアルコールから離れることができた。

父が自宅に帰ってきた。

酒から離れ、退院した父と家族で晩ご飯を食べた。

料理酒の入っていない肉じゃがは、なんだか味気なかった。

病院から、酒を一滴でも飲むと頭が痛くなる薬をもたされていた。

父が薬を飲み

安心して、母と僕と兄は散歩に行った。
そして散歩から帰ると父が頭を押さえてうずくまっていた。

家族が目を離したすきにアルコールを摂取したのだ。

「あんた!また飲んだんね!」

母は激怒し、うずくまっている父をホウキでなぐりつけた。

僕は父が飲んだ酒を探した。

しかし酒はなかった。

「どこに隠したとね」 

母はさらに父をなぐりつけた。

そして僕は原因を発見した。

原因は母が父にあげたチョコレートの詰め合わせにあった。

その中の一つが見た目はわからなかったがウイスキー入りだった。 

父は運悪く、ウイスキーボンボンを知らずに食べたのだった。

悪いのは母だった。

悪いのはホウキでなぐり続ける母だった。

母が罠をかけ、ホウキで殴ってる様に見えた。

バレンタインの時の話だ。

この頃から父の身体を病魔が襲い出す。



続く

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